『白痴』

「黒澤明のすべて」というテレビ番組の録画をビデオで見たあと、やっぱりというか急に黒澤の映画が見たくなってビデオ借りてきた。なんと1本$3から$3.50に値上げされていた。ちょームカつく。「白痴」は読んだドストエフスキーの中でも一番のお気に入り。撮影後4時間に及んでしまった『白痴』について黒澤監督は「良いシーンがたくさんあったのに、いっぱいカットしなければならなかった。こんなツライことはない」と嘆いていたが、だいじょうぶ、カットした後でも充分長かったぞ。

本を読んだときと同じ場所で泣ける泣ける。第1部では、カメダから身を引こうとするヒロインの自己犠牲、悲しさに今も昔もボロクソに泣ける。しかし、第2部に入ってからちょっと調子が変わってしまったようだ。今まで同情してもらい泣きしてきた原節子がだんだん自意識過剰なイヤや女になんているではないか。「自分はカメダさんの人生を台無しにはできないわ」と言ったり「やっぱりあなたと結婚するわ」と他の女と婚約したカメダにせまったりみたり、思い込みと嫉妬に振り回されるカメダにとってはいい迷惑である。お互い好きあってるんだったら、くっつけばいいじゃないか、身を引くんだったら一生引いてなと言いたい。これじゃあ、ありがちな自分の不幸に酔っている悲劇きどりのバカ女にすぎない。さっきまで出ていた私の涙って一体・・。

とにかくそんな自分に酔っ払って周りを振り回すから、しまいにあんな最後になるのだ。昔、本を読んだときは、「ひどいー、こんなことするなんて」と憤慨したもんだが、昨日のビデオだと「カメダのためにも三船敏郎のためにもこんな女早く殺されてしまえっ」とまでになっていた。はて、本もこんな風に書かれていたのか、それとも黒澤監督の演出によってこう思わされてしまったのかは確かめてみる必要がある。男を振り回すような女は殺されてしまえ、ってのがメッセージだったら、それはとんでもない映画だ。いやいや、純真で善良な人はこの世で生きていくことはできないってのがメッセージなんだから、原節子も善良だったらよかったのに、途中からとっても悪女として描かれてしまったことは残念だ。『白痴』は外国映画でも作られてると思うんだけど、そこではどういう扱いになっているのかね。

『羅生門』

おまけに黒澤2本立てということで『羅生門』も借りてきて見た。それというのも映画教室のじいさん先生が「黒澤映画の最高傑作」とベタ誉めしていたから。たーしーかにー、同じ話の繰り返しなのにぜんぜんダレないし、どこもケチつけるところはないんだけど、あれは芥川龍之介の原作がずば抜けて優れていたから、けっこうどの監督が撮ってもそこそこいい映画が作れたのではと勝手に推察する。しかしよくよく考えてみると原作の『薮の中』って高校のとき国語の教科書に出てきたけど、こんな女の人をレイプする話が教科書に載ってるなんて、すげえ飛んじゃった国だぜと改めて感服してしまった。

「人の心はわからねー」と何度も何度も思いっきり首をかしげていた『羅生門』の中の人たち。その人たちもあんまりにもわからなくって首をブンブン振ってしまうに違いないのが、『タイタニック』大ヒットによるクルーズ・ブームだ。昨夜テレビでコナンが言っていたんだが、現在『タイタニック』を見て感動したかなんだかで自分もクルーズ船に乗ろうと豪華客船クルーズ・ツアーが大流行らしい。しかも、なんでも船の上では『タイタニック』の大上映会が開かれているそうだ。しかし、まてよ、あの映画は船が沈んで乗客のほとんどが溺れ死ぬ大惨事の話でもあるんだぜ。そんなん、自分が船乗りながら見るか?!飛行機に乗りながら気分良く飛行機墜落の映画を見れるか、と同じことである。100万円かけてもいい、絶対、あの主人公二人が船の先頭でやったあのポーズを真似するやつらもいるはずだ。そーーんな真似してるバカ野郎がいやがったら、ゴルゴ13に代わって私が必ずライフルで仕留めてやる。さらに、もうどうせそこまでやるんだったら、とことん、南の島クルーズなんか生ぬるいもんじゃなくって、 みなさん冷たい北大西洋の海で氷山に激突して沈没するまでやってほしいもんだ。コナンも「イッツ・クレェ〜ィジーーーィ!!」と頭を抱えていた。無理もない。もう、あの『羅生門』もぶっとぶくらい人の心は複雑であるということだろうか?さっぱりわからねぇ〜。